2016年4月9日土曜日

やっぱり大阪ってええなーと思える本

本日も万城目ワールドです。
最新刊の「バベル九朔」も早速入手しましたが、それはまた改めて、ということで。
本日は「とっぴんぱらりの風太郎」を読んで以来、再読したいと思っていたこの本。

プリンセス・トヨトミ (文春文庫)
万城目 学
文藝春秋 (2011-04-08)
売り上げランキング: 160,046

万城目さんお得意の「不思議な力」は出てきませんが、やはり本作も不思議ワールドです。

映画化もされたので、ご存知の方も多いと思います。私も映画を見て以来、松平は堤真一さん、真田は中井貴一さんのイメージしか浮かばなくなってしまいました。

物語は、会計検査院の検査官3名が、実地検査で大阪を訪問するところから始まります。
・国家公務員1種試験をトップ合格し、卓越した調査能力を持つ「鬼の松平」
(彼の名前松平元が、徳川家康の原名である松平元康に由来している点がユニークです)
・小太りのおとぼけキャラだが、たまに予期せぬファインプレーをする「ミラクル鳥居」
(映画では性別が女性に変わり、綾瀬はるかさんがいい味を出してくれています)
・ハーバード大学卒で超優秀な美人ハーフ「旭ゲーンズブール」
(映画では性別が男性に変わり、岡田将生さんが演じています)

その一方で、幼い頃から女性になることに憧れてセーラー服で登校し、ひどいいじめにあう中学生の真田大輔(明らかに、真田幸村の長男「大助」に由来しています)。いつも大輔を守る幼なじみのおてんば娘、橋場茶子(明らかに「羽柴」と淀君の本名「茶々」に由来しています)。この2人のストーリーも同時進行します。

この2つのストーリーが交わるのは、松平が謎の「社団法人OJO」の実地検査を実施するところから。ちなみに、この「OJO」という名前は、何かの略ではありません。この名前は、大阪の男たちが長年守ってきたものそのもの、つまり「王女」のことです(ちなみに「王子」だったら「OJI」にしていただろう、と真田は語っています)。ここで松平は、大阪城が建つ場所の地下にある国会議事堂とそっくりな施設に招かれます。一方で大輔も、父の真田幸一(明らかに、今の大河ドラマの主人公に名前が由来しています)に連れられ、その施設を訪れます。

そこで2人が聞かされる話こそ、「大阪国」の存在です。資金不足に苦しむ明治維新時の太政官政府と条約を交わし、資金提供の見返りに、大阪の男たちは大阪国の存在を認めさせました。ただしこの存在は、外部に対しては完全に秘密。大阪の男だけが、父親からの言葉によってその存在を代々知らされ、それを秘密として守ってきています(もちろん日本政府のトップも、アンタッチャブルな話として知っています)。そして、この大阪国の総理大臣こそが、大輔の父親であり、お好み焼き屋の店主である真田幸一だと分かります(大統領自体は持ち回り制だそうですが、真田の男には別の大きな使命があります)。

この大阪国の目的はただ一つ。大阪夏の陣で大阪の住人にかくまわれた、豊臣秀頼の遺児を守り続けること。一方で、彼らが危険を犯して豊臣家の末裔を守り続けた理由がいかにも大阪っぽいです。それは豊臣家への恩義とかではなく、ただ徳川のひどいやり方に不満を抱いたから、です。要は、「ひどい話や。かわいそうや」ということです。そして大阪の男たちは、遺児(今は王女)が何か危険にさらされたとき、決められた合図に従って、立ち上がることになっています。

その話を聞いたうえで、松平は、彼の信念に基づき、大阪国に流れる大量の補助金を検査官の権限に基づき、摘発しようとします(公に摘発することは、大阪国の死も意味します)。一方、ある不幸な偶然が重なって王女が行方不明になったことから、合図に基づき、大阪の男たちも立ち上がります。その数250万人。その先頭に立つのが、大阪国総理大臣である真田幸一です。2人(と大阪の男たち)は大阪府庁の前で対峙し、その瞬間大阪府の都市としての機能は全停止します。

ここで2人が交わす話。父と子のストーリーについて、個人的にはちょっと感動を覚えました。皆さんも一度、読んでみてください。万城目さんの作品は好き嫌いが分かれる気がします。でも、私は万城目ワールドが大好きです。

いやー、本ってほんまええもんです!!


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