2016年4月2日土曜日

ボートの三人男

本日は、1889年出版のユーモア小説。
1889年と言えば、日本では、大日本国帝国憲法が発布された年です。
そんな時代にイギリスで出版され、今まで読み継がれている古典です。

ボートの三人男 (中公文庫)
ジェローム・K. ジェローム
中央公論新社
売り上げランキング: 9,065

この本の登場人物は、3人の男と1匹の犬。
彼らがこの本ですることは、テムズ河での河遊び。
キングストンからオックスフォードまで、テムズ河をひたすら上ります。
その過程で、流域の街々の歴史が語られ、そして自然が感傷的に描写されます。

しかし、この本の分類はユーモア小説。
皮肉とユーモアを交えながら、彼ら(や世間)のダメさ加減が語られます。
しかもそれが、まるで落語を聞いているかのように、実に軽妙に綴られていきます。

例えば、冒頭で綴られる病気の話。

主人公は、目にした広告に書かれていた肝臓病の兆候が全部あてはまることから、自分は肝臓が悪いと確信します。さらに、その他の薬の広告を読んでみても、それぞの病気の兆候が全て自分にあてはまることに気付きます。遂には、大英博物館で病気一般について書かれた書物も読んでみたところ、膝蓋粘液腫以外の全ての病気の兆候が自分にはあてはまることに愕然とします。一方で、この病気にだけかかっていないことに逆に不満を抱き、こんなに多くの病気を持つ自分は医学的見地から見てなんと貴重な宝だろう、と思い至ります。そこで友人である、かかりつけの医師のところに相談に行ったところ、医師は処方箋を書いて主人公に渡します。主人公が薬剤師のところに行きそれを見せたところ、何故か「うちは薬屋ですよ」と言われ、不審に思った主人公が処方箋を読んでみたところ、そこに書いてあったのは、
・ビフテキ 1ポンド
・ビール 1パイント
・散歩 10マイル
・就寝 11時
・小難しいことをいっさい頭に詰め込まないこと

冒頭からいきなりこれです。しかもこれらが、実に軽快な文章で書かれており、思わずニヤニヤしてしまいます。小説の終盤に出てくる釣りについての描写もお気に入りです。

主人公は、自分はテムズ河の釣師になる才能は持ち合わせていない、と言います。何故なら、熟練した釣師となるには、楽々と顔も赤らめずに嘘をつく才能だけでは不足しており、さらに、釣ったときの感興をこと細かに描写するとか、実直な誠実さをみなぎらせるといったことも出来る必要があるからです。さらに、主人公の友人の(主人公いわく)「ひどく良心的」な男の話も出てきます。彼は、釣り上げた魚の数を25%以上多くは言わない、という決心をしていました。しかし、1尾や2尾しか釣れない場合にこのルールは意味を持ちません。それで彼は別のルールを採用します。
・捕えた魚1尾を10尾として勘定する
・さらに、最初から10尾だけ数え足しておく
つまりこれだと、1尾しかつれなくても、20尾釣ったという計算になる訳です。これは簡単だし実行も容易なルールなので、今や、実際に魚釣り仲間の間でも広く採用されていると主人公は言います。おまけに、主人公たちが以前に訪れた酒場で目にした、ケースに入った見事な鱒の話にまで至ります。酒場で出会う人々が口々に、主人公たちがこの土地が始めてだと知ると、その鱒を釣り上げたのは自分で、そのときどんなに苦労したかを語り始めます。しかし、最後に主人公たちが誤ってケースを割ってしまい、その鱒が「石膏細工」であることが判明します.....。

もう、とにかくこんな小咄だらけ。ニヤニヤしているうちに、アッと言う間に読み終わってしまいます。ユーモア小説に分類される本が100年以上も読み継がれてきた理由が、良く分かりました。

いやー、本ってほんまええもんです!!

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