2016年7月24日日曜日

「真田丸」をもっと楽しめる本

現在、大河ドラマ「真田丸」を楽しみに観ています。
幼い頃、真田幸村が家康を追い詰めるの図を漫画で読み、心躍らせました。
本日は、幸村(信繁)の生涯について、改めて学べる一冊です。

真田幸村 伝説になった英雄の実像 (PHP新書)
山村 竜也
PHP研究所
売り上げランキング: 86,932

「はじめに」で著者は、「時代に押し流された敗者」である幸村が日本人にここまで愛される理由は、「勝敗にこだわることなく、武士としての筋を通した」生き方と、その「いさぎよさ」にある、と言います。

現在の大河ドラマでも、幸村の忍耐強さと愛嬌、そして策士ぶりは存分に描かれています。一方で、兄の信幸が残した証言が実に印象的です。
「左衛門左(幸村)は国郡を支配する本当の侍であり、それに対して我らは、造り髭をして目つきをとがらせ、肩をいからせている道具持ちというほどの差がある」
信幸も歴史に名を残す名将です。しかし、その信幸にここまで言わせた幸村の人間性恐るべし、です。

大河ドラマでは、幸村の早くからの活躍が描かれていますが、記録で確認できる幸村の初陣は秀吉の北条討伐だそうです。ここで初めて幸村は、六文銭(正確には六連銭)の旗印とともに戦います。ちなみにこの紋は、仏教説話の六道、さらには三途の川を渡るときの渡し賃に由来しており、「真田の者は常に決死の覚悟で戦場にのぞむ」という意味がこめられているそうです。

幸村を可愛がった秀吉が亡くなった後、関ヶ原で幸村は、父昌幸とともに三成(西軍)につきます(信幸は徳川につきます)。昌幸と幸村がわずか三千の兵で徳川秀忠の三万八千の軍を足止めしたことで、秀忠は天下分け目の戦いに間に合わないという大失態を犯しました。しかし、真田の獅子奮迅の活躍にもかかわらず、西軍は破れました。そして、父弟を想う信幸による必死の助命の働きかけにより、昌幸と幸村は紀州九度山に蟄居させられ、幸村はここで14年もの月日を送ります。

むなしく朽ち果てるのを待つばかりだった幸村のもとに、豊臣の使者が訪れました。大坂の陣の前のことです。幸村は「働き場所」を与えられ、憎き家康に戦いに挑むチャンスを得たことに心から感謝します。大坂城に集った武勇名高き「5人衆」は、幸村に長宗我部盛親、後藤又兵衛、明石掃部、そして毛利勝永でした。幸村に匹敵する活躍をした毛利勝永も、個人的には大好きな武将です。しかし、どれだけ素晴らしい城と武将が揃っても、幸村が知略を絞った作戦を進言しても、無能な上司(大野治長)が全てをぶち壊します。それでも幸村は「真田丸」を築城し大活躍しました。冬の陣における徳川勢の総戦死者のなんと4/5は、真田丸で生じたといいます。

冬の陣の後、幸村のもとを徳川の使者が訪れ、寝返りをすすめたと言います。しかし幸村は、
「秀頼公に召し出され多くの兵と持ち場を与えられました。これは領地を与えられるよりもありがたいこと」
「この戦は勝利を得られる戦ではありませんので、私ははじめから討ち死にを覚悟しています」
と語り追い返しました。まさに「義理」と「いさぎよさ」の人。そして幸村最後の舞台、夏の陣が始まります。

家康に大坂城の堀を埋め立てられたことで、もはや真田丸もありません。幸村最後の舞台は茶臼山。最後の作戦も盟友毛利勝永の兵が勝手に暴走したことで失敗し、これをみた幸村は、
「最後の戦を気持ちよくやろうじゃないか」
と語ったといいます。目指すものは家康の本陣のみ。脇目もふらず幸村隊は一直線に突き進みました。徳川勢は総崩れになり、徳川の旗印や陣幕も滅茶苦茶になって倒され、家康の本陣は一瞬にして壊滅状態となったといいます。家康がここまで窮地に追い込まれたのは、信玄との戦いとこのときの二度だけだったと言います。

「真田丸」より
















しかし、あと一歩が届かず、幸村は46年の生涯を終えました。そのあまりの勇猛果敢ぶりに薩摩島津家には、
「真田日本一の兵、古よりの物語にもこれなき由」
との一文が残されているそうです。また、
「花の様なる秀頼様を、鬼のやう成る真田がつれて、退きものいたよ加護島(かごしま)へ」
という幸村生存伝説まで残されているとか。

日本人は桜を愛しています。それは、その花の美しさ故もありますが、美しく花を咲かせた後にパッと散る、そのいさぎよさにも理由があると思います。日本人は「いさぎよい」態度を愛し、「いさぎよさ」を美徳と考えます。幸村こそまさに「義理」と「いさぎよさ」を生涯貫いた、日本人が愛し誇るべき武人であった、と改めて感銘を受けました。















いやー、本ってほんまええもんです!!


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2016年7月17日日曜日

言い訳にサヨナラすると決意できる本

本日の一冊は素晴らしい本です。是非一読することをお薦めします。

著者は、骨形成不全という先天障害を持って生まれてきました。
少しのことで骨が折れてしまいます。数え切れないほどの苦痛を経験してきました。
身長は約85cmで足も短く、車椅子がないと移動もできない身体です。
何をするにも、「でも僕は身体が...」と言い訳をしたくなる境遇です。

しかし彼は、言い訳とサヨナラしました。「でも...」という言葉を封印しました。
そして優秀な成績で博士号を取得し、個人クリニックを開設し、幸せな結婚生活も送っています。
この本で語られることは、恐らく他の同種の本でも言われていることです。
しかし、彼が語ることに大きな意味があると感じます。


言い訳にサヨナラすればあなたの人生は輝く
ショーン・スティーブンソン
成甲書房
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まず、幼い彼に、両親がかけた言葉が素敵です。
「痛いといって苦しむかどうかは、その人が決めることができる」
「病気のせいで一生できないことがおまえにはたくさんあるけれど、自分にできることを一生懸命に探してみなさい」
素晴らしい両親です。

そして彼は、「勝ち目のない勝負のほうが面白い」と自然に考えられる人間になります。「今何を選択するかによって未来を変えられる」と信じられる人間になります。もちろん、身体的な不便があっても、それを補って充分な人間性と能力、そして強い意志が彼にはありました。彼は、人生の真理について語ります。
「人生の夢や希望に手が届かない原因はただひとつ、その人の「でも」の大きさのせい」
だと。つまりは「言い訳」です。そして、言い訳を撃退するためのレッスンを本著でレクチャーします。

① 相手だけでなく、自分自身に対しても、真に心を通わせる。
一番好きになれない相手が一番必要な相手だってことがよくある。心のつながりとは与えること。周りの人とのつながりが多ければ多いほど、たくさんの人があなたに手を差し伸べてくれる。

② 自分に対する言葉に注意する。
自分に向かって言う言葉は慎重に選んでほしい。その言葉が自分と現実を創造する。常に自分に対して愛情と尊敬を持って話しかける。

③ 身体で自信を表現する。
心の状態を変えたいのなら、身体の状態を変えるべき。動作が感情を創り出す。

④ 意識のフォーカスを定める。
人生の貴重な瞬間を、自分に欠けているものばかり考えて浪費するなんてとんでもない。人生に与えられた条件は良いも悪いもない。ただ与えられたカードでゲームするしかない。自分に与えられた素晴らしいチャンスや才能を見つけられるかどうかは、自分次第だ。

⑤ ピットクルーは慎重に選ぶ。
親しく付き合う人たちは、自分の人生にとてつもなく大きな影響を与える。本物の友人がたった一人いるだけで、あなたの人生を変えてくれる。

⑥ 自分の人生は自分で所有する。
自分の人生に引き込んでくるすべてのものに対して、それが良かろうと悪かろうと、全責任を負う覚悟を持つ。自分の庭を誰かが散らかすことはあるかもしれないけれど、それを掃除するのは自分の責任だ。

胸に響く言葉が並びます。そして、私が最も人から良く聞く台詞であり、自分もついついよく口にしてしまう台詞である「でも、忙しくて...」「でも、なかなか時間が無くて...」についても、
「時間こそ唯一共通のもので、与えられた時間はみんな同じ。時間が問題なのではなく、優先順位の問題だ」
と一刀両断にします。

本著を読んで、言い訳だらけでやりたいことを後回しにしてきた自分を恥ずかしく思うとともに、やりたいと思っていたことを躊躇せずにどんどんやっていこうと改めて心に誓いました。


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2016年7月10日日曜日

日米関係について改めて考えさせられる本

最初にお伝えします。
本日の一冊は大変な名著です。が、既に絶版です。

この本を手に入れたいと思い、amazon等々で検索しましたが、最安値のところでも値段は3,000円以上。定価は1,300円なのに。高い....(T T) しかし、「絶版本なので止む無し」と諦めかけていたときに立ち寄った横浜のBOOK OFFさんでダメもとで探したら。ありました。108円......(- -;)

恐るべしBOOK OFF。と、いうことで本日の一冊です。

日本永久占領―日米関係、隠された真実 (講談社プラスアルファ文庫)
片岡 鉄哉
講談社
売り上げランキング: 508,247

本著の主題は、独立国としての日本の現在の異常な状態を冷静に分析し、その原因となった戦後の日米関係を紐解くことです。戦後から60年安保までの間の日本政府と米国政府の内幕、駆け引き、人間関係が実に詳細に描かれています。そして本著の主な主人公は、吉田茂、鳩山一郎、そして岸信介という3名の内閣総理大臣です。

本著を読むと、戦後の日本がいかに米国政府の横暴、政治家の面子、党利や派閥の権力争い、野党やマスコミの無責任に振り回され、独立国としての体をなさなくなっていったかが良く分かります。吉田、鳩山、岸政権下で形作られた、現在まで続く日本の状態(国防)は「名誉あるただ乗り」であり、その原因は「憲法は変えられないという神話」であると著者は説きます。

当時巻き起こった議論、戦力保持=「海外派兵」「米国の戦争に巻き込まれる」という論調は、いまの日本社会や国会にも、そのまま引き継がれています。しかし、本著を読み進めると、他国に依存する防衛がいかに危うくて弱いものであるかが良く分かります。

吉田政権が朝鮮戦争への貢献を拒否したことで、結果として、日本国は制裁を受けました。極度に不平等な初期安保条約をおしつけられました。湾岸戦争の際も状況は同じでした。「お金を出したのだから、もっと日本の貢献は評価されるべきだ」と日本社会、そしてマスコミは主張します。しかし、ヒトを出している国から見れば、日本は「獅子の倒れるのを待っている禿鷹(本著より引用)」に等しいのです。蔑視こそされ、感謝などされるべくもありません。

本著では、吉田茂を徹底して批判しています。しかし一方で、彼が戦後のGHQ占領下の厳しい状況で、天皇と天皇制を救うために、途端の苦しみをなめた事実は認めています。そして最終章では、彼が死ぬ前に残した言葉を引用し、現在(出版当時)の政権に警鐘を鳴らしています。

 立派な独立国、しかも経済的にも、技術的にも、はたまた学問的にも、世界の一流に伍するに至った独立国日本が、自己防衛の面において、いつまでも他国依存の改まらないことは、いわば国家としての片輪の状態にあるといってよい。国際外交の面においても、決して尊重される所以ではないのである。
 (中略)
 国民も、国土防衛というこの至上の命令において、すべからく古い考え方を清算し、新しい観点に立って再思三考すべきであろうと思う。

 私自身も、もちろん戦争には反対です。人が人を殺すなどという行為は許されるものではありません。従って、憲法9条は尊敬されるべきものであり、米軍に依存する防衛体制はやむを得ないものだと信じてきました。しかし、本著を読んで改めて考えさせられました。本当にそうなのでしょうか?

 他国の状況を見れば分かるとおり、「戦力保持=戦争に巻き込まれる」ということではなく、真の独立国になるということであり、対等な関係に基づいて都度協議を行えばよいのです。しかし、米軍に依存している状況では、そもそも対等な関係にすら立てていません。現在の状況のほうがむしろ、日本政府と国土防衛にとっては危険な状態であると言えるかもしれません。

 著者は、そもそもの現在の「日本の衰退の原因こそ憲法」であり、現在の世界情勢のなかでは「国防をおろそかにする国は存立できない」と結論づけています。戦後70年を超えたいま、もう一度憲法と国防について自分の頭で考えてみる必要性を感じた一冊でした。

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2016年7月3日日曜日

美味しい料理が食べたくなる映画

本日は、久々の映画です。
映画はちょいちょい観ていました。
が、ここで感想を書こうと思うほどの一本がありませんでした。
しかし、本日の一本は、なかなか味のある作品でした。
なんせ、アカデミー賞最優秀外国語映画賞も受賞しています。

バベットの晩餐会 HDニューマスター [DVD]
紀伊國屋書店 (2011-11-26)
売り上げランキング: 1,781

映画の舞台は、重苦しい海に面したデンマークの片田舎。ルター派の牧師である父と清貧な生活を送っている二人の美しい娘、マーチーネとフィリパ。マーチーネには、謹慎中の士官であるローレンス中尉が求愛をします。一方のフィリパには、休暇中だったパリの著名な歌手であるパパンが求愛をします。しかし、姉妹ともに、その求愛を受け入れず、ただひたすらに清廉な生活を送り続けます。

ローレンスが、マーチーネの元を去るときに残した言葉が印象的です。
   "人生は厳しく無慈悲だ。この世に不可能があることも悟りました"

それから35年が経ち、清貧な生活を続ける姉妹の元をある女性が訪れます。パリ・コミューンの市街戦から逃げてきたバベット。全てを失い、もはや死ぬしかない状況で姉妹に救われ、家政婦として無償で働き始めます。

そしてさらに14年が過ぎ、マーチーネもフィリパもバベットも、そして信者たちも歳を重ねます。姉妹が亡き牧師(父)の生誕記念日の食事を計画していたまさにそのとき、バベットの元に宝くじがあたったとの知らせが届きます。金額はなんと1万フラン!(現在の価値で1千万円くらいのようです。)そこで姉妹は、バベットからある提案を受けます。「晩餐会でフランス料理を振る舞わせて欲しい」と。

この晩餐会に集う人々は、歳を重ねるなかで様々な人生の選択をしてきました。そして、その選択で悩んでいました。「自らの選択は正しかったのか?」と。信者たちは、愚痴を言い合い、互いを非難してばかりいます。将軍となったローレンスも、出世だけを求めてきた人生にむなしさを感じ、自分の選択が正しかったのか悩んでいます。マーチーネとフィリパは何も語りませんが、人に与えるばかりだった人生をどう感じていたのか....

一方で、バベットが調達した食材は、質素で慎ましい生活をモットーとしてきた人々にとっては刺激的なものばかりでした。海亀に牛にウズラ...。姉妹は、バベットの晩餐会を前にして、信者たちに「魔女の晩餐」に招いてしまったことを謝罪します(清貧なルター派の人々にとって、豪華なフランス料理は魔女の晩餐だったのです)。そして信者一同、「料理について感想は言わない。考えない。舌は使わない」ことを誓い合います。

そして始まった晩餐会。そこには見事な料理とお酒が並びます。「海亀のスープ」「ブリニのデミドフ風」「ウズラのパイ」等々。素晴らしい美食の力で、人々は次第に和やかな会話を交わし始めます。

そして、宴も終焉に近づき、ローレンスが皆の前で語ります。
   "人間は弱く先を見る力もないが 人生ではいくつも選択を迫られる 
 そして自分の選択におののく 我々は怖いのだ
 しかし我々の選択は重要ではない 我々はいずれ目覚める 
 そして悟るのだ 神の恵みは無限なのだと 
 我々はただ恵みを待ち 感謝の心で受け入れるのだ 
 神の恵みに条件などない その証拠に選択したものは手に入れた 
 拒否したものも全て手に入れた 拒否したものさえ与えられたのだ 
 神の恵みと真実は出会い 正義と平穏は口づけを交わす" 

宴を辞すローレンスがマーチーネに残した言葉が、最初の別れのときとは実に対照的です。
   "今夜私は知ったのです。この美しい世界では全てが可能なのだと"
そして信者たちも、手をつないで歌い、笑い、語り合って家路につきます。

人生は、厳しいものでも無慈悲なものでもありません。美しいものなのです。
我々の選択には、正解も間違いもありません。ただそれを受け入れるだけです。
新しいもの(豪華な晩餐)を受け入れたことにより、人々はそのことに改めて気付きます。

宴のあと、バベットは姉妹に「自らがパリの高級レストランであるカフェ・アングレの料理長であったこと」、「今回の料理の食材調達で1万フランを全て使いきったこと」を伝えます。そして、その事実を哀れむ姉妹にバベットは告げます。
   "芸術家は貧しくありません。お客様は喜びました"

「最後の晩餐」を彷彿とさせる晩餐会のシーンですが、その場で供された見事な美食は、豊かな恵みを人々の心に与えました。人生は窮屈なものではなく美しいものです。それを感じられた一本でした。

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