2016年7月3日日曜日

美味しい料理が食べたくなる映画

本日は、久々の映画です。
映画はちょいちょい観ていました。
が、ここで感想を書こうと思うほどの一本がありませんでした。
しかし、本日の一本は、なかなか味のある作品でした。
なんせ、アカデミー賞最優秀外国語映画賞も受賞しています。

バベットの晩餐会 HDニューマスター [DVD]
紀伊國屋書店 (2011-11-26)
売り上げランキング: 1,781

映画の舞台は、重苦しい海に面したデンマークの片田舎。ルター派の牧師である父と清貧な生活を送っている二人の美しい娘、マーチーネとフィリパ。マーチーネには、謹慎中の士官であるローレンス中尉が求愛をします。一方のフィリパには、休暇中だったパリの著名な歌手であるパパンが求愛をします。しかし、姉妹ともに、その求愛を受け入れず、ただひたすらに清廉な生活を送り続けます。

ローレンスが、マーチーネの元を去るときに残した言葉が印象的です。
   "人生は厳しく無慈悲だ。この世に不可能があることも悟りました"

それから35年が経ち、清貧な生活を続ける姉妹の元をある女性が訪れます。パリ・コミューンの市街戦から逃げてきたバベット。全てを失い、もはや死ぬしかない状況で姉妹に救われ、家政婦として無償で働き始めます。

そしてさらに14年が過ぎ、マーチーネもフィリパもバベットも、そして信者たちも歳を重ねます。姉妹が亡き牧師(父)の生誕記念日の食事を計画していたまさにそのとき、バベットの元に宝くじがあたったとの知らせが届きます。金額はなんと1万フラン!(現在の価値で1千万円くらいのようです。)そこで姉妹は、バベットからある提案を受けます。「晩餐会でフランス料理を振る舞わせて欲しい」と。

この晩餐会に集う人々は、歳を重ねるなかで様々な人生の選択をしてきました。そして、その選択で悩んでいました。「自らの選択は正しかったのか?」と。信者たちは、愚痴を言い合い、互いを非難してばかりいます。将軍となったローレンスも、出世だけを求めてきた人生にむなしさを感じ、自分の選択が正しかったのか悩んでいます。マーチーネとフィリパは何も語りませんが、人に与えるばかりだった人生をどう感じていたのか....

一方で、バベットが調達した食材は、質素で慎ましい生活をモットーとしてきた人々にとっては刺激的なものばかりでした。海亀に牛にウズラ...。姉妹は、バベットの晩餐会を前にして、信者たちに「魔女の晩餐」に招いてしまったことを謝罪します(清貧なルター派の人々にとって、豪華なフランス料理は魔女の晩餐だったのです)。そして信者一同、「料理について感想は言わない。考えない。舌は使わない」ことを誓い合います。

そして始まった晩餐会。そこには見事な料理とお酒が並びます。「海亀のスープ」「ブリニのデミドフ風」「ウズラのパイ」等々。素晴らしい美食の力で、人々は次第に和やかな会話を交わし始めます。

そして、宴も終焉に近づき、ローレンスが皆の前で語ります。
   "人間は弱く先を見る力もないが 人生ではいくつも選択を迫られる 
 そして自分の選択におののく 我々は怖いのだ
 しかし我々の選択は重要ではない 我々はいずれ目覚める 
 そして悟るのだ 神の恵みは無限なのだと 
 我々はただ恵みを待ち 感謝の心で受け入れるのだ 
 神の恵みに条件などない その証拠に選択したものは手に入れた 
 拒否したものも全て手に入れた 拒否したものさえ与えられたのだ 
 神の恵みと真実は出会い 正義と平穏は口づけを交わす" 

宴を辞すローレンスがマーチーネに残した言葉が、最初の別れのときとは実に対照的です。
   "今夜私は知ったのです。この美しい世界では全てが可能なのだと"
そして信者たちも、手をつないで歌い、笑い、語り合って家路につきます。

人生は、厳しいものでも無慈悲なものでもありません。美しいものなのです。
我々の選択には、正解も間違いもありません。ただそれを受け入れるだけです。
新しいもの(豪華な晩餐)を受け入れたことにより、人々はそのことに改めて気付きます。

宴のあと、バベットは姉妹に「自らがパリの高級レストランであるカフェ・アングレの料理長であったこと」、「今回の料理の食材調達で1万フランを全て使いきったこと」を伝えます。そして、その事実を哀れむ姉妹にバベットは告げます。
   "芸術家は貧しくありません。お客様は喜びました"

「最後の晩餐」を彷彿とさせる晩餐会のシーンですが、その場で供された見事な美食は、豊かな恵みを人々の心に与えました。人生は窮屈なものではなく美しいものです。それを感じられた一本でした。

いやー、映画ってほんまええもんです!!


↓↓↓↓↓気に入った記事があればクリックください。



↓↓↓↓↓たくさんのブログ記事が集まっています。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

にほんブログ村 映画ブログ 映画日記へ

0 件のコメント:

コメントを投稿