2016年6月25日土曜日

ニュー・シネマ・パラダイスが観たくなる本

本日は「暗幕のゲルニカ」と一緒に購入した原田マハさんの小説。
とにかく、映画を無性に観たくなる一冊です。

キネマの神様 (文春文庫)
キネマの神様 (文春文庫)
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原田 マハ
文藝春秋 (2011-05-10)
売り上げランキング: 6,376

主人公(あゆみ)は、シネコンの建設に向かって邁進し、その大企業で初の女性課長に抜擢されます。しかし、そうしたシチュエーションには他人の嫉妬がつきもの。謂れの無い噂を流され、逃げるように退社します。そんな彼女が就いた新たな仕事こそが、映画雑誌「映友」の編集でした。

一方、彼女の父親(通称ゴウ)は映画をこよなく愛する一方で、ギャンブル依存症でもあり、借金をしまくって、今や友人は小さな映画館「テアトル銀幕」の経営者1人だけ。心筋梗塞で倒れたのを機に、それまで散々振り回されてきた妻と娘に強制的にギャンブル断ちをさせられます。

そんな父娘の共通点は、こよなく映画を愛すること。ささいな偶然が重なり、娘が入社した会社「映友」(歴史が古く、映画通には愛されている映画誌のみが収入源。しかし、その発行部数もすっかり落ち込み、今や潰れそうな状況)が立ち上げたサイト『キネマの神様』において、ゴウは神様の使途として映画評を書き始めます。

素人丸出しな一方で、素直な作品への愛情を綴る文章は、何故か人をひきつけ、一部で人気を集めていきます。しかし、そこに「Rose Bud(ローズ・バッド)」と名乗る人物から英語で挑戦的な書き込みがされたことで、サイトは一気に世界で注目を集め始めます。映画に対する圧倒的な知識と玄人然としたロジカルな解釈、その一方で映画の良くない点をあげつらう姿勢はゴウとは真逆であり、ローズ・バッドとゴウの映画評対決はヒートアップしていきます。

一方で、いつのまにか二人の間には、国境も言語も超えた固い友情も芽生え始めます。ゴウは、かつてあゆみが手掛けていたシネコンによって、ただ一人の親友が経営する「テアトル銀幕」が潰されようとしていることをローズ・バッドに相談します。それに対してローズ・バッドは、自分の正体を晒すことにより、公共の電波を使って救いの手を差し伸べます。彼の正体は、世界一の映画評論家でした。そして、ローズ・バッドもゴウに対して、最初で最後の頼みを告げます....

正直、なんだか納得いかない内容も随所にありました。例えば、70年も映画を観続けてきた割に、ゴウがとりあげる映画は、比較的最近のメジャーな映画ばかりだったりします(折角、Rose Bud(薔薇の蕾)を出したのなら、「市民ケーン」での映画評対決を読みたかったです)。それに、ゴウの書く文章が、世界一と言われる映画評論家が目を付けるようなレベルの文章とは、正直とても思えませんでした。

しかしそれでも、本書を読むと映画が無性に観たくなります。本書の最初の頁に、こんな文章があります。
 観るたびに思う。映画は旅なのだと。
 幕開けとともに一瞬にして観るものを別世界へ連れ出してしまう。名画とはそういうものではないか。そして、エンドロールは旅の終着駅。訪れた先々を、出逢った人々を懐かしむ追想の場所だ。だから長くたっていい。それだけじっくりと、思い出に浸れるのだから。
 最後の一文が消え去ったとき、旅の余韻を損なわないように、劇場内の明かりはできるだけやわらかく、さりげなく点るのがいい。

私も昔から映画が大好きで、独身時代はしょっちゅう映画館に通っていました。映画館が真っ暗になった瞬間に、意識は映画の世界に飛び始めます。そして、いい映画を観た後には、明かりが点ったあとでも暫く余韻に浸りたくなります。そんな風にして、数えきれないほどの映画を、私も観てきました。小さな子どもがいる今は、アニメ以外の映画を映画館で観ることもすっかりなくなってしまいました。でも、家には今でも、300本ほどの映画がDVDであります。でも、家では映画の世界に入り込めません。映画を観るなら、絶対に映画館です。

私がこよなく愛する映画は沢山あります。『リバー・ランズ・スルー・イット』『グッド・ウィル・ハンティング』『ロード・オブ・ザ・リング』『海の上のピアニスト』『旅立ちの時』『ガタカ』『バグダッド・カフェ』『ショーシャンクの空に』『ゴッド・ファーザー』『グラン・ブルー』『ルディ』『ユージュアル・サスペクツ』『アマデウス』『アンダーグラウンド』『ステラ』『独裁者』『太陽がいっぱい』『情婦』『十二人の怒れる男』『アラビアのロレンス』『スティング』『デッドゾーン』『山の郵便配達』『GO』『転校生』等々。そして、私が生涯最も愛する一本も、(現在のところ)『ニュー・シネマ・パラダイス』です。子ども達が大きくなったら、いつか名画座でこれらの映画を観て、心行く迄感想を語り合いたいと思います。映画への懐かしい愛情を思い出させてくれた一冊でした。

いやー、本ってほんまええもんです!!


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3 件のコメント:

  1. 突然のコメント、失礼いたします。
    書評コミュニティサイト「本が好き!」を運営しております、和氣と申します。

    今回書評を拝読し、ぜひ本が好き!にも書評を投稿していただきたいと思いコメントいたしました。

    本が好き!URL: http://www.honzuki.jp/

    本が好き!では、書評をサイトに投稿していただくと本がもらえる、献本サービスを行なっております。

    献本は書評を1件以上ご投稿いただけると申し込み可能となります。貴ブログの過去のエントリを転載いただいても構いませんので、ご投稿いただければ幸いです。

    書評家さんの交流も盛んで、本について語れるサイトとなっております。

    ご自身の書評サイトと併用で利用されている方も多いです。
    (弊サイトの書評掲載画面に、貴ブログへのリンクを貼ることができます。)

    よろしければ一度サイトをご覧いただけますと幸いです。

    不明な点などありましたらお気軽にご連絡ください。(info@honzuki.jp)

    どうぞよろしくお願いいたします。

    返信削除
    返信
    1. 和気様

      書評をご覧頂きまして有難うございます。

      また、サイトにお誘いを頂き、有難うございます。
      拝見させて頂きました。面白そうですね。

      本好きなのに、読んだ内容を忘れてしまうので、備忘の意味で始めたブログです。
      ブログにあげている内容でよろしければ、拙い文章で恐縮ですが投稿させて頂こうと思います。

      よろしくお願い致します。

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    2. しげ@中小企業診断士 様

      本が好き!へのご登録・ご投稿をいただき誠にありがとうございます。

      何かご不明点などありましたら、お気軽にご連絡くださいね。

      引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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