2016年8月6日土曜日

鴨川とオニと大木凡ちゃんな本

本日の一冊も、万城目ワールドです。
実は、恥ずかしながらまだ読んでいなかったデビュー作。妄想全快で楽しめました!

鴨川ホルモー (角川文庫)
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本作の舞台は京都です。私も学生時代に京都に住んでいたので、本作に出てくる場所はほとんどリアルに、映像として頭に浮かんできました。その意味でも楽しめました。

本作の主人公は、2浪の末に京都大学に入学した、さえない大学生(新入生)の安倍。彼は、葵祭のエキストラのバイトの帰りに、「京大青竜会」といういけてない名前のサークルに勧誘されます。飲食のみの目的でコンパに参加したはずの安倍は、そこで早良京子の完璧な鼻に一目惚れし、入会します。

しかし、入会して暫く経っても、このサークルの目的がさっぱり分かりません。ただそれも、祇園際の宵山を境に変わり始めます。この日、安倍たちは上級生に連れられ、人で溢れる四条烏丸交差点で、京都産業大学玄武組(北の玄武)、立命館大学白虎隊(西の白虎)、龍谷大学フェニックス(南の朱雀)のメンバーと顔合わせをします。そして、青竜会が「ホルモー」をするサークルであり、他の3つのサークルが「ホルモー」を戦い合うライバルであることを知ります。

「ホルモー」とは対戦型の競技で、相手と戦って勝敗を決めるのが目的です。敵味方10名ずつで試合を行い、どちらかが全滅するか、もしくはどちらかの代表者が降参を宣言するまで続きます。普通じゃない点は、戦うのが人ではなく、人が操る鬼(あるいは式神)である点。1人が100匹の鬼を操り、両チーム1000匹ずつの鬼が戦います。では、なぜホルモーなのか?それは、自分が操る鬼が全滅して競技続行不能となった競技者が、鬼との契約に基づいて、本人の意志に係らず絶叫させられる叫び声に由来します。

上級生からのそんな話に半信半疑ながら、鬼語の訓練を続けた安倍たち新入生は、3月に入って遂に、その鬼たちと対面します。吉田神社での奇妙奇天烈な “吉田代替りの儀” を経て、安倍たちは鬼の使い人となります。つまりは、実際に鬼が見え、鬼を操れるようになります。

そして迎えた立命館白虎隊とのホルモー初戦。安倍とは全くウマが合わないものの、その恐るべき攻撃力から「吉田の呂布」とのあだ名を授けられる芦屋の活躍で、青竜会は圧倒的優位に試合を展開します。しかし、安倍の親友である高村の致命的なミスにより、青竜会は敗れます。

その際の芦屋の高村への心無い罵声、更には秘かに想いを寄せる早良京子が芦屋と付き合っていた事実を知り、おまけに二人の痴話喧嘩に巻き込まれて芦屋に殴られたことから、安倍は芦屋と同じチームで戦うことを拒否します。しかし、知らないうちに鬼と契約を交わしてしまっていることから、青竜会を辞めることはできません。結局安倍は、唯一の残された道である「第十七条」の発議を目指します。

「第十七条」が発議されれば、4つのサークルをそれぞれ二分割し、計八組でホルモーを争うことになります。しかしそのためには、青竜会のなかで安倍以外の4名から、一緒に戦うという賛同を得る必要があります。また、芦屋たちを倒して優勝しない限り、「第十七条」を発議したメンバーにはずっと「何ものか」の恐ろしい悲鳴がつきまといます。

しかし安倍は、親友である高村、芦屋の傲慢さに不満を抱えていた三好兄弟、さらには大木凡人のようなオカッパ頭と大きな黒縁眼鏡が特徴で安倍に対してはずっと冷たかった楠木ふみからの賛同を得て、「第十七条」を発議します。そして誕生した安倍率いる京大青竜会ブルースは、後に「吉田の諸葛孔明」との異名を授かることになる楠木ふみの恐るべき知略により勝ち星を積み重ね、遂に芦屋率いる京大青竜会新撰組との優勝決定戦に進みます。しかしその前日、安倍は隠されていた楠木ふみの自分への想い、そして自分の勝手さを思い知ります。

 ー  俺は自分の力をこれっぽっちも信じていない。今だって芦屋を恐れている。つまり、俺は自分の仲間を信じていない。俺のためにずっと力を貸してくれていた人のことにも、何も気づいていない。(中略)俺だけが彼らを信じていない。
 ー  個人的な理由のため、ただの人数合わせに仲間を利用し、口だけは感謝の意を示しながら、その実、まるで彼らの力を信用していなかったのだ。(中略)もっと大切なもののために戦いたかった。自分のためではなく、高村のために、三好兄弟のために、そして何よりも、楠木ふみのために勝ちたいと思った。

そして迎えた優勝決定戦。軍師たる楠木ふみが大事な眼鏡を壊してしまうというハプニングに見舞われますが、やはり楠木ふみの作戦により、戦況を一気にひっくり返します。しかし、試合は意外な結末を迎え......

本著は、確かにバカバカしい妄想小説です。しかし、私はやはり、著者のゆるーい世界観が好きです。そして、本著は、青年の成長の物語だとも思っています。また本著を読み終えた人は、楠木ふみというキャラに魅了されるはずです。映画版では栗山千明さんがオカッパ頭で熱演し、ラストでは美しく変身した姿も見せてくれました。


さらに、本著と併せて、こちらも読みました。本著のサイドストーリー6つで構成された「ホルモー六景」です。

ホルモー六景 (角川文庫)
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万城目 学
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"京都産業大学玄武組二人静のストーリー" "楠木ふみのサイドストーリー" "(やっと出てきた我が母校)同志社大学黄龍陣復活のストーリー" "玄武組および龍谷大学フェニックスの元会長が東京丸の内で繰り広げるストーリー"。そして、特にお勧めは以下2編です。"もっちゃんこと梶井基次郎と檸檬のストーリー"  "立命館大学白虎隊会長と不思議な長持のストーリー"。これらのサイドストーリーには、安倍や楠木、高村や芦屋も登場します。そして「鴨川ホルモー」のストーリーとも交じり合っています。併せて読めば、楽しめること請け合いです!

いやー、本ってほんまええもんです!!


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