2016年9月17日土曜日

差別について考えさせられるエイリアン映画(『第9地区』)

本日は映画です。知人にすすめられ、視聴してみました。
ストレートな感想を言えば「めっちゃ、おもろい!!!」です。
が、一方で、グロテスクな場面もかなりあるので、ご注意ください。

第9地区 [DVD]
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・本作の製作は「ロード・オブ・ザ・リング」三部作のピーター・ジャクソン
・舞台は南アフリカ共和国のヨハネスブルク
・物語はドキュメンタリー風に、事件関係者のインタビューから始まる
・なんと主人公の台詞の9割は、役者のアドリブ!!
この時点で既に、普通のハリウッド作品とはひと味もふた味も違います。ストーリーはざっと以下の通り。

ある日突然、ヨハネスブルク上空に巨大な宇宙船が現れ、人類はパニックに陥ります。しかし、そのなかを調査したところ、衰弱しきって、人類を攻撃する気力など全く無いエイリアンたちが発見されます。人類はエイリアンたちを救出して難民として扱うことを決定し、隔離地区である「第9地区」(いわゆる難民キャンプ)を与えます。

それから28年が経ち、文化や外見の違いから、人間とエイリアンの小競り合いが看過できないレベルに達してきます。人間はエイリアンたちを差別し、彼らを「エビ」と蔑称していました(確かに外見はエビのようで、かなりグロいです)。止む無く人類は、彼らを新居住区である「第10地区」(詳細は分かりませんが、「強制収容所のよう」といった台詞が出てきます)に移すことを決定します。










そこで始まったのが、立ち退き受諾署名の取得手続き。エイリアンの管理を任されている超国家組織MNUは、律儀にも(と言っても、社会からの批判を避けるために形式だけ)難民条約に従い、住民(エイリアン)たちから立ち退き受諾の署名を取り始めます。そのチームリーダーに指名されたのが、本作の主人公ヴィカス。しかし手続きと言っても、第9地区内は既に無法地帯(まさに危険なスラム街)と化していたため、多数の傭兵を連れての決死の作業となります。

その作業の過程において、ヴィカスはある家のなかで不思議な筒状の物体を見つけ、そこから噴出された謎の液体を浴びてしまいます。それを境に、彼の身体には徐々に変調が生じ、怪我をしていた左手からエイリアン化が始まります。妻からも見捨てられ、市民からは差別され、MNUからは貴重な実験材料として追われることとなります。そして彼は、第9地区内に逃げ込みます。そこで理知的なエイリアンであるクリストファーと出会い、彼が秘かに準備していた宇宙船への帰還計画が、実は自分の問題(エイリアン化の進行)の唯一の解決策でもあることを知り......

といった感じです。本作で描かれるのは、次第に身体がエイリアンと化していく主人公の「戦い」です。登場する兵器やロボット(?)に、主人公がギャング団やMNUの傭兵と繰り広げる戦闘シーン、これらはなかなか圧巻(但し、正直グロい)です。









しかし、本作で描かれている真のテーマは『差別』です。舞台をわざわざ南アフリカにおいていることからも、アパルトヘイトを風刺していることは明らかです。しかし、それだけではありません。土地の外から来た者(難民等)、外見が自分たちと違う者(他人種等)、謎の病気(?)にかかった者(感染症等)に対して人間が示す、非情なまでの「差別」を描いています。

ヴィカスの元友人であった人たちのインタビューが、本作の冒頭には登場します。彼らにはきっと、自分が差別を行った、という意識はありません。しかし、誰もヴィカスの気持ちには寄り添っていない、彼の声を聞いていないことは明らかです。ヴィカスの声を聞くこともせず、ただ彼に同情している自分に酔っているだけ、でした。

最近は世界でも人権が注目されており、人権は法律を上回るものだ、と言われます。しかし本作では、金と力が人権を上回る、という現実も露骨に風刺しています。本作は2009年の作品ですが、人権尊重を高らかにうたうイギリスやドイツなどが中国に尻尾を振っている昨今の国際情勢を見るに、現実は今も変わらないようです。

物語の終盤まで、ヴィカスは平気で差別もするし、自分のことだけしか考えていないような人間でした。しかし、終盤に彼は、自分の命を危険にさらしながらもクリストファーを助け、宇宙に逃がします。我々が、人間が人間たる所以であると考える「倫理感」を持っていたのは実は、差別され、殺されかけ、最期には完全なエイリアンと化したヴィカスのほうだった、ということです。

「人間らしい」という言葉の意味は一体何なのか?真の善とは?真の悪とは?
そんなことを考えさせられる映画でした。おすすめです!!

いやー、映画ってほんまええもんです!!


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