2016年10月16日日曜日

平和を守るために真に必要なこととは?(『カエルの楽園』(ネタバレ))

本日の一冊は、色々と物議を醸す発言で有名な百田尚樹さんの著書。
ただ、日本の現状について深く考えさせられる一冊であることは確かでした。

カエルの楽園
カエルの楽園
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百田尚樹
新潮社
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ストーリーは、突然現れたダルマガエルたちに支配された祖国から逃れ、旅に出たアマガエルのソクラテスが、多くの苦難を経てツチガエルたちが平和に暮らす楽園ナパージュに辿り着くところから始まります。

「この国は何故こんなに平和なのか?」というソクラテスの疑問に対し、この国のツチガエルたちは口を揃えて答えます。この国の平和を守っているのは『三戒』の存在だと。『三戒』とは「カエルを信じろ」「カエルと争うな」「争うための力を持つな」。これがある限り、ナパージュが攻められることは絶対に無い、と。

一方で、この国は崖の上にあり、その下の沼地には凶暴なウシガエルたちがいます。そして、その沼のなかでは他のカエルが毎日食べられています。しかし、ナパージュのカエルは言います。
ー わしらには関係ないことだ。(中略)ナパージュのカエルは、他のカエルたちの騒動には関わらないのだ。

一方で、ナパージュのカエルは毎日「謝りソング」も歌っていますが、過去のどんな過ちについて謝っているのかすら誰も詳しくは知りません。ソクラテスは疑問を持ちます。
ー この国のカエルたちは三戒については詳しいのに、昔のことになると、知らないことばかりだね。

ナパージュ一の物知りとされており強大な権力を持つデイブレイクは、ナパージュの民は生来残虐で、ナパージュはひどい国だと言い張り、永久に謝罪をし続けることを国民に説きます。東の岩山に居座る巨大なワシであるスチームボートについても、いずれ追い出し、ナパージュは真の自由と独立、平和を手に入れる、と説きます。

しかし、ナパージュの嫌われ者であるハンドレッドは、ソクラテスに囁きます。
ー 仮にナパージュのカエルが本当にひどいことをしたとしよう。しかしたとえば、あんたのじいさんのじいさんのじいさんの、そのまたじいさんが一度だけ悪いことをしたのを、あんたは永久に謝り続けるのか?
そして、ナパージュが襲われないのは「三戒」のお蔭などではなく、スチームボートが守ってくれているからだと教えます。


そんなある日、ウシガエルが南の崖をよじ上り、ナパージュに侵入してきます。ナパージュは大騒ぎになり、7名の元老で構成される元老会議が開かれます。その場で、若い元老であるプロメテウスは説きます。
ー ウシガエルの国に三戒はありません。ウシガエルたちには、三戒を守る義務はないということです。
しかし、他の元老はあくまで自分たちが三戒を守っていさえすれば争いになることは絶対に無いとして、南の崖を防衛する手段をとることを一切拒否します。

さらに、ナパージュを守る代わりに、自分がウシガエルを追い払うときは一緒に戦うように、お互いに攻められたときは助け合うように、というスチームボートの提案をプロメテウスは他の元老に諮ります。
ー すべて自分たちだけが得をする約束事というのは、この世に存在しません。それはあまりにも都合のいい考え方ではないでしょうか。
しかし、この提案についても他の元老は拒否します。そして、ウシガエルを防ぐ具体的手段も講じることなく、ただウシガエルと誠心誠意話し合うことを求めます。やがて、スチームボートもナパージュを去ってしまいます。


ウシガエルたちは、どんどんナパージュの領地を侵食していきます。しかし、ナパージュのカエルたちはひたすら争いを避けることだけに汲々とし、ウシガエルを追い払った仲間のカエルも三戒違反として処刑してしまいます。そうしたなか、プロメテウスが三戒破棄を提案したことから、国民の議論が一気に高まります。

ある「語り屋」は言います。
ー ナパージュのカエルは戦ってはいけないんだ。徹底的に無抵抗を貫くべきなのだ。もしウシガエルがこの国を攻めてきたら、無条件で降伏すればいい。そしてそこから話し合えばいい。
ソクラテスは思います。無条件で降伏すれば、話し合う前に食べられるのでは?
ある「娘」は言います。
ー わたしたちの子どもが戦いの場に連れていかれるなんて、想像するだけでふるえてきます。
ハンドレットは言います。自分の娘がウシガエルの慰みものになるかもしれないという想像が欠如している。
エンエンと言う国を祖に持つピエールも言います。
ー 三戒を捨てるような愚をおかしてはなりません。
ハンドレットは言います。ナパージュには、エンエンに奪われた小さな池があるが、三戒がある限り取り返すことができない。やつらには三戒があるほうが都合がいいんだよ。
元老であるガルディアンは主張します。
ー 戦ってもいいのは、自分が殺されるかもしれない場合だけだ。南の草むらにウシガエルが入ったくらいで、戦いをすることは許されない。

そして始まった国民参加の採決の場において、年取ったカエルと比較的若いカエルの数の差により、三戒破棄の決議は否決されます。しかし、ウシガエルはどんどんナパージュの国土を侵食し、遂にはツチガエルを食べ始めます。それでも、元老たちは、ナパージュのオタマジャクシを守ったハンニバル兄弟に厳罰を与え、助けにきたスチームボートも追い払ってしまいます。そして、ナパージュの国は滅びます。


これがどこの国の話かは、すぐに分かると思います。「憲法9条」「米軍」「中国」「マスコミ」「韓国」、様々なものがこの寓話には登場します。この問題については、同じ日本人でも意見が大きく分かれます。しかし、日本人なら皆、平和を求めていることは確かです。憲法9条があるから平和が守られている。私もそう教えられてきましたが、果たして本当でしょうか?真に日本国が平和であるためには何が必要か、国民一人ひとりがより現実を直視したうえで、今一度考えてみる必要があります。

本作で、三戒を死守することだけに汲々とする元老たちに述べたプロメテウスの言葉が印象的でした。
ー たしかにナパージュでは三戒は他の何よりも優先される法です。しかし、それ以上に大切なものがあります。それはナパージュのカエルたちの命です。もし三戒がナパージュのカエルたちの命を危うくする時には、三戒を破るのもやむなしと思います。

いやー、本ってほんまええもんです!!


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