2016年10月8日土曜日

祖国=My Countryについて深く考えさせられる本(『ぼくらの祖国』)

本日は、知人の紹介で読んでみた一冊です。
内容を否定的に捉える方もいそうですが、私の心には深く響きました。

ぼくらの祖国 (扶桑社新書)
青山 繁晴
扶桑社
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著者は、現参議院議員の青山繁晴さん。歯に衣着せぬ物言いで有名な方です。

著者が本著で読者に求めていることはただ、「祖国とは何かについて考えて欲しい」ということです。日本では「祖国とは何か」について教えません。しかし、子どものときに「祖国とは何か」を教わるのが日本以外の全ての国では普通だ、と冒頭で述べられています。

著者も指摘しているとおり、日本で「祖国」が語られない理由は一般的に、「戦争に負けたから」だと考えられています。二千年を超える永い歴史を持つ日本は、たった一度だけ戦争に敗れ、占領されました。しかし、戦争に負けたことが祖国を喪う理由にはなりません。事実、世界中の主要な国は全て戦争に負けた歴史を持っていますが、国民に祖国を教えない国は日本以外にありません。勝った側の言う通りにせねばならない、という戦後以来続く思い込みをそろそろ捨てる必要がある、と著者は強く主張します。

ー 平和をたいせつにすることと、祖国を語らない、教えないことは、同じではない。平和を護るためにこそ、祖国をしっかり語ることが欠かせないのではないか。(中略)自分のことはたいせつにしないで、相手だけをたいせつにする。そんなことは、できるのか。
ー (祖国とは英語でMy Country。)世界のどこに、My Countryと言って右翼扱いされる国があるんだ。
ー 祖国という言葉は世界でもっとも普遍的な、ふつうに使う言葉であり、右翼用語扱いするのは敗戦後の日本社会だけだ。

祖国とは、政府のことではありません。我々日本人の母なる存在です。日本人誰もが共通して愛し続けるべき普遍のものです。そして祖国について考えるとは、祖先を敬い、子々孫々を想うことです。私欲のためならず、日本人のため、日本の社会のため、公のために生きることです。そのことを考えさせるための題材として、著者は4つの事実を挙げます。

まず、北朝鮮の拉致問題。ひとつの主権国家が、別の主権国家の国民を拉致して奪い去る。国際社会では、これは戦争です。しかし日本は、北朝鮮が勝手に取捨選択した数名の国民を連れ戻しただけで、残りの国民は見捨てました。自衛隊が国境を超えて取り戻しにくる心配は、北朝鮮にはありません。自衛隊は、海岸線に何万もの兵士が押し寄せるような古い戦争であり、かつ政府が「出動してよい」と決めない限り動けません。つまり現行の自衛隊は、これからの新しい戦争において、国民を護ることができません。今の形を変えない限り、国の子々孫々を護ることができません。

続いて、東日本大震災。GEの作った欠陥炉を米国に言われるままに購入した日本政府、津波対策の欠陥を露呈した東電、我が身可愛さに現場を見に行かなかった専門家、アリバイ作りのためにヘリで原発に少し立ち寄っただけで現場把握もせずに逃げるように立ち去った菅直人首相等々、私欲のために動いた人だらけです。しかし、そんななかでも南三陸町の防災庁舎で町民への避難を呼びかけ続け、波にさらわれた三浦さんと遠藤さんのことが述べられています。彼らが示した、ひとのため、みんなのため、公のために命を捧げる姿勢に、著者は日本人としての生き方を見ます。

そして、東京都小笠原村の硫黄島。映画でも有名になった太平洋戦争の激戦地です。ここでは、二万人の日本兵が亡くなりました。しかし現在、硫黄島に国民が立ち入ることはできません。そして、一万三千人の日本兵の遺骨が、いまも硫黄島に残ったままです。戦闘中、米兵は日本兵の亡骸のうえにコンクリートを直接流し込んで滑走路を造りました。そして信じられない事に、自衛隊はその滑走路を今もそのまま使い続けています。日本は戦後教育で、日本兵は悪者だったと教えてきました。しかし、硫黄島で亡くなった日本兵のほとんどは職業軍人ではなく、一般国民でした。彼らは、自分たちの玉砕は覚悟のうえで、一日戦いを引き延ばせば一日分、本土で女と子どもが生き延びられる。そこから祖国は甦る。そう信じて、私欲のためではなく、妻と子どものため、子々孫々のために、信じられないような暑さのなか、地下壕を素手で掘り続けました。彼らの魂に対し、我々日本国民は胸を張って、今の日本を「立派な祖国」として見せられるでしょうか?

『硫黄島からの手紙』より










最期は、資源の話です。日本はかつて、自前の資源を有しないがために戦争を始めました。そして多大な犠牲とともに敗れました。そんな日本人が、子々孫々のためになすべき最大の課題は、自前の資源の確保であるはずです。その意味で、いま最も有望な資源こそ、日本海に眠るメタン・ハイドレートであると著者は指摘します。しかし日本政府は、その可能性を意図的に無視しています。大手石油会社役員の発言がその理由を表しています。
ー 日本は戦争に負けたんだ。勝ったアメリカの言う通りに、資源は海外から買う。それで世界秩序も、われわれ日本の経済もうまく廻っている。日本海のメタン・ハイドレートは実用性が高いからこそ、それを覆す怖れがある。(中略)日本は資源のない国だと決まっているし、資源のない国でいなきゃいけない。
まさに、日本に根付く負け犬根性、そして何よりも私欲・既得権益にしがみつく病理の権化と言えます。

本著が「心に深く響いた」と冒頭に書きました。正直、東日本大震災と硫黄島の章では、涙を抑えられませんでした。著者は言います。

 命は自分のことだけ考えるのなら意味はない。子々孫々に受け継いでこそ命は輝く。

我々日本人は、祖先を敬い、子孫を想い、彼らに対する責任を果たすことを思い出すべきです。そして、母なる祖の国に対する想いを共有すべきです。本著は、必読の書だと思います。私たち一人ひとりが今一度、祖国について考えてみる必要性を痛感しました。

いやー、本ってほんまええもんです!!


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