2016年5月21日土曜日

通念なんて経済学でぶっ壊せ的な本

本日は、最新作「ヤバすぎる経済学」が出版(早速購入!)されたことで読み返した一冊。
シリーズ1作目の「ヤバい経済学」です。このシリーズ、好きです。

ヤバい経済学 [増補改訂版]
スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー
東洋経済新報社
売り上げランキング: 3,142

「経済学」と銘打ってはいても、お堅い本では全くありません。数式なんて全く出てこない。社会で一般的に信じられているような通念を、経済学の考えで検証している(覆している)本です。雑学本と言ったほうが近いかもしれません。しかし、そのテーマは面白く、実に刺激的(過激)です。

手始めは、子どもを引き取りにくる親の遅刻を減らすために、罰金制度を導入したイスラエルのとある保育園の話。結果、親の遅刻はすぐに......増えた。これは、道徳的なインセンティブ(罪悪感)が経済的インセンティブ(小額の罰金)で置き換えられてしまったため、と説明されています。

日本人なら馴染みの深い相撲の話も出てきます。昔からよく言われる「八百長はあるのか?」という問題です。7勝7敗の力士が最終日に、既に勝ち越している(でも賞争いには関係がない)相手と戦った場合の勝率は不自然に高いそうです(8割近い)。これが八百長かどうかは定かではないものの、他の場所での同じ力士同士の対戦成績や部屋単位での戦績を見るとその不自然度はより増す、と著者は言います。

特に過激なのは、1990年代にアメリカで犯罪が減少した理由の分析です。世間で言われる「好景気」や「警官の増員」はいくらか犯罪減少に寄与したものの、一方で、ニューヨークでジュリアーニ市長などが主導したことで有名な「割れ窓理論」のような「画期的取締まり戦略」はほとんど何の効果も及ぼさなかった、と言い切っています。

では、犯罪減少に最も寄与した事実は何なのか?

著者の結論は「中絶の合法化」です。1973年以降の中絶の合法化により1990年代に犯罪が減少した、と言うのです。実際に、チャウシェスク政権下のルーマニアでは、その逆のことが起こりました。中絶を禁止した以降に生まれた子どもたちの犯罪率が、それ以前に生まれた子どもたちよりもずっと高くなったそうです。反発を受ける可能性は十分に承知したうえで、それでも著者は様々なデータに基づき、実に論理的にこの結論を主張しています。

さらに、私のような小さい子どもを持つ親にとって、実に興味深いテーマも取り上げています。

親が子育てで出来ることとは?

例えば、データに基づく分析では、家に本がたくさんある子どもは、実際に試験の成績も良いそうです(但し、相関関係は明らかにあるものの、因果関係は不明とか)。しかし一方で、多くの親が普通に信じている通念である、子どもによく本を読んであげると試験の成績がよくなる.....みたいな事実は無いそうです。

結論として、数字に基づく分析では、親が子どもにしてあげる色々なことは子どもの成績とはほとんど相関関係がないそうです。美術館に連れて行ったり、たくさん本を読んであげても、あまり意味は無いと。そんなことより、親がどんな人であるか、どんな人と結婚して、どんな人生を歩んできたか、ということが重要なそうです。しかしこれは、親にとっては実にショッキングな結論です。何故なら、この結論だと、大事なことはずっと前に決まってしまっており、遺伝や取り返しがつかない親の過去で子どもの将来が決まってしまうからです。

しかし一方で、著者はこんなデータも示しています。養子であることと試験の点には強い負の相関関係がある。子どもの成績は、育ての親の知能指数よりも生みの親の知能指数にずっと強い影響を受ける。しかし、そんな事実にも係らず、養子に出された子どもは、大人になるころには、知能指数だけから予測される運命から力強く這い上がっているそうです。仮に親が子どもにしてあげられることに大して意味はないとしても、子どもに望む姿について親が自身を厳しく律し、自らの背中でリアルタイムで見せていくことにはやはり大きな意味がある、ということではないでしょうか。

いやー、本ってほんまええもんです!!


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